私は、カレーはご飯にかけて食べるものと思っている。その信念に変わりはないのだが、「それとこれとは別」ということで、おいしいと思った「許せるカレーうどん」がひとつだけある。
私は数年ずつ転勤して歩く仕事をしている。これまでに7回転勤で職場を変わった。
けっこう山の中の職場にいた時だ。同僚が、午後の仕事に余裕があった時だったか、さらに山奥の滝の名所にある蕎麦屋に行こうと誘ってくれ、数人で行った。
そこは蕎麦屋で、もちろん蕎麦がおいしい。しかし知る人ぞ知る人気メニューがあるという。それがカレーうどんだった。
「え〜、カレーうどんかあ、邪道だ邪道だ」と心の中で叫びながらせっかく勧めていただいたので食べてみた。
これが、おいしかったのだ。ちゃんとカレーとしての美味しさがあり、「うどんに合うように和風にしました」というわけでもなく、でもうどんとマッチしていた。そして何よりもそこに入っていた角煮のような豚肉が美味しかったのだ。
感動した私は、その後何度かこっそり一人でその蕎麦屋に行ってカレーうどんを食べた。
もう30年も前のことになってしまった。あのカレーうどんは健在だろうか。