大学生だった息子が,「渋谷の近くにすごくおいしくて安くて量がたっぷりのカレー屋があるから,一度連れて行ってあげたい」と,何度か話してくれていた。
しかし,その店は,大人気店で常に行列ができていて,カレーがなくなる昼過ぎには閉店してしまうという。おまけに日曜日は,やっていないという。なかなか味わえる機会はなかった。
最初に息子から「リトルショップ」の話を聞いてから何年もたってその機会は訪れた。
息子に連れて行ってもらったその店は,とても小さなものだった。行列はすでにできていた。店の方が外に出て,何人並んでいるか数えていた。私たちの数人あとで,「この後の方の分はありません。」と言われていたと思う。
小さな店の中は,狭く,席も限られていた。家族経営なのだろうと思えるようなアットホームな雰囲気の店だった。
メニューはたくさんあった。トッピングの数がたくさんあったと思う。写真付きで掲示されていたメニューには驚いた。カレーの盛がすごい。トッピングも大量だ。これは,食べきれない。
少な目のカレーを頼んだが,やっとの思いで全部食べた。昔懐かしい日本の家庭のカレーを思う味だった。おいしくいただいた。
開店から並んでいた人から「ここまで」と言われた人までの数を思わず心の中で数え,安さを思い,「これで商売として成り立つのかなあ」などと,余計なことを思っていた。
カレーが好きで,利益を度外視して,おいしいと食べてくれる人々にふるまうことが楽しくてやっているなら幸せだろうなとも,勝手に思った。
そして,学生にとって,安くて,量がたっぷりで,たくさんのトッピングがあるこの店は,とてつもなく魅力的だと思った。
息子の学生生活の楽しいひとコマとなってくれたことに感謝する思いが湧いた。